ほんとのうた(仮題)
第11章 頼むから
「さあ、どうなるかな」
俺も真も、マウンド上に立つクローザーの投球に、注目してゆく。
ホント、なんの話してるんだろうな。また、そう感じた。
野球に無関心な若い女子相手に、自らの趣味を押し付けるようで気が引ける。が、たった今は、そうでもなさそうだ。
「が、がんばって……」
真はぐっと拳を握ると、画面の中のクローザーの彼を応援している。
「よし、あと一人……」
当然ながら俺も、その一投一投に熱を上げた。
試合は九回裏、ツーアウト。あと打者を一人打ち取れば、ゲームセットにまで漕ぎつけている。
しかし、四球とヒットで出したランナーを、それぞれ一塁と三塁に置く。点差は僅か一点差。すなわち、ヒットを打たれれば同点。長打なら、一気にサヨナラ負けの緊迫した場面だった。
熱気を帯びた両チームのファンが、怒声を混ぜ合う中。若い投手は、捕手のサインに頷き、ゆっくりと投球動作に入った。
そんな時のこと――。
「どこへ行くんだ?」
思わず席を立とうとした真を、俺は呼び止める。
「なんかさ……見てられなくなっちゃってね……」
立ち上がった真は、俺やテレビに背を向けたままに言った。その心細い背中に向けて、俺は何気に訊ねている。
「それは、もしかして――この場面が、他人事だとは思えないから――か?」
「――!」
真の肩口が、ピクッと揺れる。調度、そんな時だった。
キンッ!
バットがボールを叩く、快音。そして実況のアナウンサーが、興奮のままにその状況を伝える。
『痛烈な打球は、一塁線を――抜けたぁ! 今、同点のランナーがホームイン! 逆転のランナーも二塁から三塁を――回るぞ! 打球に追いついたライトが、懸命にバックホーム――!』
ザザァ――バシィ!