ほんとのうた(仮題)
第11章 頼むから
『ホームは、クロスプレー! 延長か、サヨナラか――?』
――セーフ!
ワアアアアア――!!!
試合は結局、俺の贔屓チームの“サヨナラ負け”となった。
「負けちゃった、の……?」
立ったままテレビ画面を窺った真は、おそるおそるとそう訊ねていた。最早、俺の付き合いで観戦していた感じはなく、まるで自分の大事な人の様子を気にかけたかのようですらあった。
「ああ……」
俺自身もその結果に肩を落としながら、端的に答える。
勝利を収めたチームの選手たちが、ベンチからグランドへと駆け出し、喜びを爆発させてゆく。
その同じ場面には、主役の座を奪われたクローザーが、ひっそりとマウンドを降り行く姿もあり……。帽子のつばで表情は隠れているが、髭の口元は真一文字に結ばれていた。
その対照的な両者が、一つの画面に映し出され――それは、とても象徴的なシーンである。
「バカヤロウ!」「やめちまえっ!」――心無い声が、打たれた彼の背中へと、頻りに投げかけられた。
それを、耳にして真は思わず――。
「ひどいよ……あんなに、一生懸命やったのに……」
その言葉に覚えた共感を、グッと押し込め俺は言うのだった。
「だが、打たれちまったら――言い訳はできないよ」
「そんな……私、野球知らなくても、わかる。あの場面で投げるのが、どんなに大変なことなのかって……」
「そうだな、きっと。だからこそ、逃げてばかりもいられないことだって、十分にわかってるのさ。明日も同じ場面があれば、あのクローザーはまたマウンドに立つんだから」
俺はそう話し。一呼吸を置いて――真に訪ねた。
「真は――どうする?」