ほんとのうた(仮題)
第12章 城崎家の人々
目的が仕事にありつくことでも、金をせびることでもないなら、一体それならなんの用かと、そう疑問に思った彼らに対し、それについては俺の方も目的なんて説明しようがないのだから、そうなるのもある程度は仕方あるまい。
それでも、この空間を不快に感じたのは、俺を除けば――あと、もう一人であり。それまで大人しく畳の上でちんまりと正座なんてしていたのだから、本来の彼女の性質からするのなら、そろそろ限界を迎えていたとしても、まるで不思議ではなかった。
だから、その手始めとして――
「ああ、もうっ! なんっ、か――ムシャクシャするなあ!」
顔の下半分を覆っていたマスクをずらし、真が苛立ちも顕わに立ち上がっていた。
真のその様を、一同が唖然と見上げた。
「女……か?」
「そりゃ、女でしょう」
「随分と、若そうだわ」
「彼女……でしょうか?」
「まさか……? でも、なんか見たことあるような気も……」
城崎家の面々は、各々それぞれの反応を示した。
関係ないとは断ってあったが、どうやらその存在は気になって仕方なかったようだ。まあ、それも無理はないが――それにしても。
「オイ……」
なんのつもりだと後方に立ったその顔を仰ぐが、真は「いいから」という意の視線を返すと、こんな風に前置きをする。
「あ、私のことは気にしないでいいからね。只の部外者だし。だから、今から言うことも、単なる独り言なの。だから、ホント――気に、しないで」
真はそう言いながら口元のマスクをずらして、胸を反らして深く息を吸った。