ほんとのうた(仮題)
第12章 城崎家の人々
そうしてから――
「……?」
一同がその一挙手一投足に注目する中で、胸一杯に息を吸い果たしていた、真は――
「ざっけんなっ、テメーらァ!! なんっにも、わかってねーくせにィ――勝手なこと言ってんじゃあァ、ねぇぇーぞおおおぉ!!!」
その瞬間――キーン――と、耳が鳴った。
真の全力の絶叫が、密室の籠った空気を全て吹き飛ばして、まるで無きものにしたかのように――。
それに対する、一同の反応は――
…………?
唖然、或いは呆然なのであった。
俺と等しく、耳の奥がキーンとなっているであろう彼らは、正にそんな表情をしている。
すると、背後でスッと襖が開き、顔を見せた仲居がおどおどとして言った。
「あの……なにか、不手際でもございましたでしょうか……?」
「え、いや……そういうわけでは」
それに辛うじて応対した拓実が誤魔化し、仲居はまた襖を閉じた。
そんな周囲の反応の一切を、その歯牙にかけるでもなく――
「うーん……ああ、すっとした」
真はすまし顔で言うと、畳の上にトンと胡坐をかいて座る。彼女はどこまでも彼女らしく、自分のやりたいことを済ませたということなのだろう。
「……っ!」
そんな姿を見て、俺は咄嗟に口元を押さえた。思わず吹き出しそうになり、流石にマズイと感じてその衝動を堪えたのだが……。
しかし、まるで俺の代わりとばかり――
「クックック……」
その低く籠った笑い声は、鎮まった部屋に殊の外、よく響いている。
はっ、として顔を向けた俺は、その時、実に意外な光景を目にするのだ。
「フフフ――ハッハッハ!」
あの親父が、声も高らかに笑っているではないか――。