ほんとのうた(仮題)
第12章 城崎家の人々
でも、この邂逅は想像していたものとは異なり、ごく細やかなものであると予感する。しかしだからこそ、心して立ち向かわなけれなならなかった。
「ではな――俺がお前に問いたいことは、一つだけだ」
親父はそう言って、そっと右手の人差し指を立てる。
「あの時、俺が言ったセリフを忘れてはいまいな」
「ああ……覚えている」
それは――
『断言してやってもいい。お前はいつか必ず、この時のことを後悔することになるだろう』
忘れるはずもなく、頭の片隅にはいつもその言葉が、確かにあった――。
「それで――どうなんだ?」
親父は俺にしかわからぬほど至極端的に、それを問うていた。
俺は先に、その意図を察しようと試み、しかしすぐに止める。それが無粋だと思った。親の顔色を窺う、当然ながらもう子供ではないのだ。
だから俺は純然と思考し、そうしてから――。
「後悔は……するさ。苦しかったり、やるせなかったり。上手くいかないことの方が、よほど多かった。だから、後悔もする。だけど――」
「んんっ――?」
「俺は別に、そんな自分を恥じない。それらが全て、俺の生き方となっていたから」
伝わるのか、それは微妙だと感じた。素直な想いというものが、決して他者に対して明快なものであるとは限らない。それでも一応、俺は話していた。
すると、親父は――
「フ――ならば、悪くもなかろう」
と、笑んだ。