ほんとのうた(仮題)
第2章 緊急モラトリアム
「あ、お礼で思い出したけどさ。なんで、昨日の夜――私になにもしなかったの?」
「はあ……?」
「好きにしていいって、そう言ったじゃん。あ、もしかして――」
真は俺の顔をまじまじと覗き、同情交じりにこんなことをのたまうのである。
「オジサンてED?」
ピキッ――!
それはいかに温厚で大人の俺であっても、流石にキレてもいい場面だった。
「ち、違うわっ! むしろ絶倫のビンビン! 元気すぎて逆に困ってるくらいだぞ!」
明らかにキレ方を間違えたことを、俺は直後に後悔している。
しかし――
「ええっ、怪しいなあ……」
真に疑わしげな視線を向けられると、俺はそのまま意固地を貫く姿勢を取った。
「な、なんだよ? 別にこんなことで、見栄はったりしねーって」
俺の『ED疑惑』など、今はどうでもいい話なのだが。実際違うのだから、それはキチンと否定しておく必要に迫られた。だけど「絶倫でビンビン」は、流石に言い過ぎである。実際は至って普通レベルだ。
「だったら、どうして抱かないのぉ。私ってさあ――自分で言うのもなんだけど、結構いい身体してるって思ってるんだけど」
そう言いながら、胸を張り腰に手を当てる真。形の良い胸とくびれた腰を強調している。彼女の言うことに、些かの反論の余地もなかった。
が、それにしても本当によく自分で言えたもんだな、オイ。それでいて嫌味にならないのは、彼女の人徳? ――な、わけないよな。
ホント、いい性格してやがる。これは当然、皮肉だが。