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ほんとのうた(仮題)

第2章 緊急モラトリアム

「まったく……なんの話をしてやがる」

 呆れて言いながらも、俺は思った。

 あけすけな会話の内容に反して、なぜか真はやたらと無邪気に見える。そう感じたことで若干ながら、俺は心の余裕を取り戻していた。

 そうなのだ。所詮、相手はまだまだガキ。くれぐれも己のペースを乱されることは避けよう。

「バーカ。そこらで拾ってきた女なんか、おいそれと抱くかよ」

 俺はそう言って、口元にニヒルな笑みを浮かべた。

 見たか。これぞ内面にゆとりを宿した大人の姿というもの。そんなものを思い知らせてやった、つもり――だったのだが。

「ああ、なーんだ。つまり、カッコつけちゃってるわけね」

「は?」

「男も中年になると欲望に素直になれないなんて、なんか哀れだわ。言っておくけどね、オジサン。こんなチャンス、二度とないかもしれないんだよ?」

 そんな風に言われ、まじまじと顔を覗き込まれた俺――

 ピキピキッ!

 一度鎮めた血の気が、再び頭部へと逆流していくのがわかった。 

 今すぐ、この部屋から叩き出してやる!

 俺は猛然と立ち上がり、のんびりと胡坐をかいている真の手首を掴み取った。

 すると、その瞬間――。

「あん、わかったからぁ。そんなに慌てないで」

 真は軽く俺の手を振り払い、妙に色っぽい声を奏でた。

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