ほんとのうた(仮題)
第13章 あとは終わりゆく、だけ?
「こらっ、なにを……?」
そう言って、上げようとした頭部を強く抱き留め、真は囁くように言うのである。
「ねえ――もう一回、抱いてよ」
「――!?」
なんとか肘を立てて、俺はふくよかな胸より顔を持ち上げた。
ベッドで仰向けになっている真を、真上より見下ろしている。
「……」
真は軽く鼻を啜り、パチクリと瞬きを一つ。潤ませていた瞳の表層をリセットしかのように、感情を隠した眼差しで真っ直ぐ上に俺を見据えた。
そうして、おそらくは――その目線を、淀みなく淀ませてゆく。それは、浮かべた戸惑いの色彩で、俺の心に誘いかけているかのようだ……。
その上で更に、その言葉を用いる。
「ねぇ、これが最後なんだよね? だったら、いいでしょう――思い残さないためにも、滅茶苦茶に抱いてよ」
そんな言葉を受けて――
「……!」
強張った身体が、ワナワナと震えた。抑え込んだ衝動が、心臓の鼓動を頻りにドクドクと脈打たせてゆく。
たぶん、俺は怯んでいた。否――恥ずかしながら、激しい興奮を覚えていたのである。
「迷わなくてもいいから、したいように、して。どうせ同じことでしょ。今になって、我慢する意味なんてないから」
「……ッ!」
柔らかく物分りの良すぎる言葉が、火の灯りかけた俺の衝動を後押ししていた。
そっか、最後だしな。真が、そう言うなら。今更、なにも変わるまいし……。
グラリと傾き行く身体が、真の唇へと引き寄せられて行く――。
瞬間、真は瞳を閉ざさずに、じっと俺の目を見据えていた。
その光の奥に、俺はなんらかの想いを――見つけている。
だから――
「バーカ……そんな未練がましい真似が、できるかよ」
「なぜ?」
そう、問われて――。
「こんな風に、お前のことを抱く俺を――真は、嫌いなはずだぞ」
寸前で止まり、俺は辛うじて最後ぐらい恰好をつけようとしていた。