ほんとのうた(仮題)
第13章 あとは終わりゆく、だけ?
※ ※
駅までの道中で立ち寄った、牛丼屋にて。
バクバク、ムシャ、パクパク、カプ――んぐっ! ――ふう。
「……」
いつもにも増して豪快な食事風景を、俺は黙って見つめていた。
そんな真の食べる姿も、これで見納めかと思うと感慨も一入(ひとしお)といったところか。
そういえば、初めてあった夜もこうして牛丼を食ったっけな。もっとも、食ったのは真だけだが……。
帰る前に飯でも、と立ち寄ったのが牛丼屋とは、いかにも情緒がない。
丼の上に盛られた“超メガ盛り”の肉という肉が、十分に味も確かめられないままに、順次そのスレンダーな身体の中に呑み込まれていった。
真は一心不乱、目の敵の様に、牛丼を食してゆく。まるであらゆる欲を、食欲の一点に集約し、それを満たし尽くそうとするが如く。
それを只、見守る俺との間には、会話の割り込む余地すらも許されずに。しかし、それはそれで、この色気も情緒もない最後の晩餐の景色は、一向に悪くはなかった。
互いになんらかの想いを口にすれば、そこに寂しさが漂う。たぶん、真は本来、ウエットなのは苦手のはず。だから豪快な食欲を以って、その全てを喰らおうとしていた。
まったく……真、らしい。そう思った。
「……」
俺は微笑しながら、その姿を見守っている。その時間の終わりが刻々と近づいていた。