ほんとのうた(仮題)
第13章 あとは終わりゆく、だけ?
俺と真。無職の中年男と若手人気歌手。そんな二人は、男と女という意味ではそうに違いなくとも、かなりイレギュラーだったことにも、また相違あるまい。
そんな俺たちにも、別れの場面は訪れていた。
「本当に東京まで行かなくて、よかったのか?」
新幹線の切符を券売機で求めながら、もう一度そう確認すると。
それに対しツンと鼻先を明後日の方向に向けた真は、とても投げやりに言った。
「だ・か・ら――いいって、言ってるじゃない!」
ボールが激しく転がり出しそうだな――と感じるくらい。真のご機嫌は、急な角度がついて傾いてしまった。
できれば最後に、彼女らしい屈託のない笑顔を見たいとは思う。が、どうにも俺という男は、女子の機嫌を窺うのは不得手である。どうやらこのまま、それが元に戻る可能性は低そうだった。
ま、仕方ないか。俺はゆっくり、ふっとため息をついた。
「オイ、こっちだぞ」
真の乗車券と特急券、それと自分の入場券を手に、俺は真を誘い改札に向かう。すると――
「いいよ。あとは、一人でわかるから」
ツカツカと俺を追い抜きつつ、切符を俺の手から奪い取ってゆく。