ほんとのうた(仮題)
第13章 あとは終わりゆく、だけ?
真はどんな顔をしていいのか、わからないといった感じでもある。その困惑をひたすら苛立ちと変えて、自分でも既に制御不可能に陥っているかのようだった。
「そう言うなって。見送りくらい、させてくれよ」
「ご勝手に!」
真はそう言って、自分はさっさと改札を通り抜けて行った。
――ふう。
俺はまた息を吐き、苦笑を浮かべ、足早にホームに向かう。ホームへの階段を下る、真の背中を追って――。
他のどれとも違うことは、そうであるのだとしても。仮初めにも“男女の別れ”という意味では、それは少なくとも俺の方が場数を踏んでいる、らしく。
だから、平気という理屈は屁理屈にすらなるまいが。それでも一応、諦めること――諦めたような顔をするのには慣れていたのだろう。
しかし、そんなものは、なんら無意味なスキルである。俺が涼しい態度を取ればこそ、真にしてみれば、それがこの上なく不快であるのかもしれなかった。
そうと、察しながらも――温かく柔らかな風が吹き抜け斜陽も眩しい、このプラットホームで。
「……」
「……」
俺たちは言葉もなく同じ方向を向き、まだ見えない電車の姿を見つめようとしている。
そして、程なくして――
『まもなく一番線には16時46分発、あさま624号東京行が到着いたします』
そのアナウンスの言葉が、淡々とした響きで流れた。