ほんとのうた(仮題)
第14章 (仮題)
すると――
『だけど私、気づいたんだ……ううん、みんなに気づかせてもらったよ』
ようやく顔を上げ、彼女はしっかりとした口調で、こう話した。
『全部、大切な唄。ニセモノなんか、ひとつだってなかったんだって』
「……」
真の言葉を聞いて、決して落胆したわけではなく。その晴れやかな姿を見て、俺は思うのである。
そうか……。それがお前の見つけた答えなら、それでもいいさ。
だが、彼女が伝えようとしていたことは、それだけに留まらなかった――らしく。
『だけど、ね……これでも色々と悩んでぶつかって、そして、決めたことがあるの……』
そこで言葉が途切れた時、なにかを察したように場内のファンたちが息を呑んだ。
重大発表――それが成されることを暗に予感し、一様に彼女の発する声に耳を傾けてゆく。
そうして――
『これからはもっと、自分の想い、それに近い場所から私の唄を届けていきたいと思ってるんだ。だからね――』
「――!」
『とりあえず今、二つだけあって。まずは、その内のひとつを――』
それが――
『おぼつかないけど……それでいて、確かで……まだ、名も無い……そんな、この唄を……今、新たな私から届けさせてほしい』
お前の――?
その時、舞台の大型ビジョンに映し出されたのは、真の言葉の真意を表すもの――。
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【ほんとのうた】(仮題)
by 真
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