ほんとのうた(仮題)
第15章 たとえば――
「ん、しってるの?」
「ええ、もちろん。特に『真』になってからの楽曲は、私も好きですので」
「そっか……」
それを嬉しく感じた俺は、ついこんな悪ノリしてしまうのだ。
「実は、俺さ――彼女とは、こういう仲なんだよ」
そう言いつつ俺は、中島さんに向かって自分の携帯を差し出してゆく。
そこに表示したのは登山の時に撮った、真との唯一の一枚であったのだが――。
「……」
中島さんは両目を凝らして、穴が開きそうなくらい俺の携帯の画像を見つめていた。
「どうかな?」
その間に耐え切れず、そう訊くと。
「うーん……社長のガラケーですと画面が小さくて、果たしてなにが映っているのやら。しかも、かなり引きの画像(え)ですし……」
「いやっ、よく見なって! ホラ、コレ――俺の隣り!」
「もしかして、このジャージの女の子が『真』だとでも?」
「うん、その通り!」
自身満々にそう訴えた俺に対して、中島さんは実に深いため息を「はあっ」と吐いた。
「それで、お二人は――どのようなご関係ですか?」
「それはそれは、只ならぬ関係といった感じ……かなぁ?」
「社長。寝言なら寝てから言ってください。あ、ですが――本気で寝ないでくださいね。午後はちゃんと仕事してもらわないと、私が困りますから」
どうやら金輪際、中島さんがその話を信じることはなさそうだった……。
「ハハ……了解です」
ま、そりゃそうか――と、俺は苦笑を浮かべる。