ほんとのうた(仮題)
第2章 緊急モラトリアム
これはマジで、ヤバいことになってきたな……。
俺は頭を掻きながら、一刻も早く真の件をどうにかせねばと焦り始めていた。
そんな刹那、不意に騒ぎの当事者である、真が呟く。
「やだな……ほっといてくれれば、いいのにさ」
その沈んだ声を聞き、俺はふっとため息をついた。
「そう言うなよ――基本的には皆、真のとこを心配してるんだと思うぜ。ファンだって、それこそ日本中にいるんだろう」
その俺の言葉を聞くと、真は激しく苛立った。
「そんなこと、オジサンに言われなくてもわかってる! なんにも知らないクセに、適当なこと言わないでくれない。ウザいしキモいから!」
くっ……! あまりの言われように、ムッとする俺であったが……。
まあ、大変なんだろうな……きっと。
シュンとした真の姿を目にして、俺はその心中を少しだけ察した。
すると、真はまたポツリと言う。
「天野ふらのは、ニセモノなんだ……」
「偽物?」
「そう……ニセモノ。ニセモノの唄しか唄わないから……ホントの私じゃないの」
「……」
寂しそうに語っていた、その真の真意は、俺にはわからなかった。
だが、その気持ちの一端には、微かに触れていた気がしている。
――プッ。
真は無言のまま、手元のリモコンでテレビを消した。
「あのな……とにかく」
その背中に、俺が声をかけようとした時だ。振り向き立ち上がった真に――
「――えっ!?」
俺は突然、抱きつかれてしまうのだった。