ほんとのうた(仮題)
第3章 異常なる日常で
お前からしたら、その誤差に一体どれほどの意味があるんだよ? 大体、初対面の時点でしっかり「オジサン」呼ばわりしてたからな……。
そんなことを虚しげに思いつつ、しかしそれを口にしてこの話題を続けることを、俺は嫌った。どうせこの後「私のお父さんと〇歳しか違わないね」とか言われて、余計なダメージを負うことになるに決まってる。
それなのに真はまた予期せぬ角度から、俺を精神を容赦なく口撃した。
「ともかく――とても無職の人には、見えないね」
ズキッ!
あ、ああ……そうだった。呑気にラーメン食ってて悪かった。そんな暇があったら、早く世間さまのためにも次の仕事を見つけなければ……。
不意に自分の立場を思い知らされ、俺の心理は一気に強烈な自己否定へと向かった。
「だからさぁ――」
「いや、もうその手の話はいいから」
まだ続けようとする話を、止めようとする俺だったが。
構わず真は、こんな風に言ったのである。
「オジサンが私のことを見つけてくれて、ホントに良かったなって」
「――!」
その言葉とその時の笑顔を、俺は卑怯だな、と思うのだ。
なぜって? そんなの、もうなにも言えなくなるからに決まってる……。
「ほら……もう行くぞ」
俺は不機嫌を装うと、店を出るよう真を促すしかないのだ。