ほんとのうた(仮題)
第3章 異常なる日常で
ああ、もう、それはいい……。
しかし、よりによって妙なヤロウと出くわしちまった。やっぱ、ツキがねーな最近。
「――と。アレ、真は?」
俺は店から少し離れた処で、周囲をキョロキョロと見渡す。太田の登場で先に行かせてしまったが、土地勘のない真は近くで俺を待っているはず……。
すると――
「――!?」
道向こうのコンビニ前。俺が買って来た、七分丈のジーパンとブルーのTシャツを身に着けているのは、確かに真の後姿だ。店側のガラスに張り付くように、こちらに背を向けている。
俺が不審に感じたのは、その少し離れた処で様子を窺っている若い男。
まさか、気づかれたか――?
胸騒ぎを覚え、俺は急ぎ道路を横断しようとするが――。
普段は大して交通量の多い道でもないのに、こんな時に限って連なった車が行く手を阻んでいた。
そうしてる間にも道路の向こうでは、真を気にかけた男が徐々にその距離を縮めて、どうやら声をかけようとしている。
二十後半くらいか。やや小太りの地味な雰囲気の男だった。
「くっ……」
車通りの切れ目を待って、ようやく俺は道路を渡った。すると――
「あ、あのさ――キミ。ちょっとだけ、こっち向いてくれない?」
「――!」
声をかけられた真の、その肩がビクッと竦んでいたのがわかった。
「違ったら、ゴメンね。でもテレビとかツイッターで、この辺りに来てるらしいって、そういう情報があったからさ……」
男は真の背中に手を伸ばしながら、そんな風に訊ねている。
「キミ、もしかして――らのチン、じゃあないの?」