ほんとのうた(仮題)
第3章 異常なる日常で
その後、スーパーにて主に食料の買い物を済ませると、俺たちは部屋に戻った。
これから先は、暫く自炊にて食事を賄うことが肝要になろう。なるべく真を外出させないとの意図もあるが、それ以前に俺の懐事情を考えてのことだった。
もちろんこの俺にしても、それなりの蓄えはある。が、備蓄が減る一方の生活というのは、精神的に健全とはいかない。抑えられる出費は、できる限り抑えておきたいのが本音である。
「あっ、シャンプー買うの忘れちゃった」
大きなレジ袋の中身を覗き込みながら、急に真は嘆くように言った。
「シャンプーなら、まだ――」
あったはずだぞ、と俺が顔を向けるが。
「だって、オジサンが使ってるの薄毛の人用のヤツでしょ? 薬用だから地肌はやたらスキッとするけどさぁ……」
と、真は随分と失礼な不平を漏らした。
「別に、薄毛専用じゃねーよ!」
確かに育毛に気を使い始めた、今日この頃ではあるが……。
四十の夏――俺の頭髪は、まだまだ健在である。
陽が傾き夕刻になると、俺はキッチンに立ち夕飯の支度を始めた。この日のメニューは、なんら工夫もない普通のカレーと彩りも適当な気まぐれ的サラダのみ。
長年一人暮らしの俺ではあるが、料理の腕前は推して知るべし、といった処。必要に迫られて作るだけであって、それを愉しむような心のゆとりを一切持ち合わせてはなかった。
一般女子の羨望の的らしき、料理自慢のイケメンタレントとは比較対象ですらないのだろうが。
ま、そこらに転がってる男など、所詮はそんなものだ。