無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　食事後――。

　俺は缶ビールを傾けつつ、テレビにてプロ野球観戦。野球好きの中年にとって、それは至福の時間である――はず、なのだが……。

　同じくビールでグビグビと喉を鳴らし、俺の隣りにてそれを見つめた真によって、その興は著しく損なわれようとしていた。

「オジサンが応援してるの、どっち？」

「ああ、無駄に派手なユニホームの方だ……」

「ふーん。１０対０の――ゼロの方だね」

「そうだ……な」

「あ、でも。まだ逆転とかできるんじゃない？　大きなホームラン打てば、一気に２０点くらい入ったりしてさ」

「野球ってのはな……そんな大味なスポーツじゃねえから」

　今時の「プロ野球とか、オジサンくさいよねー」とか言いそうなそこらの若い女たちよろしく、どうやら真もその御多分に漏れるものではないようだ。

　まあ、それならそれで、大人しくしててくれればいいものを……。

「あ、また打たれたよ。なんかボロボロ。今日はもう負けだよねー。オジサン、まだ応援するつもり？」

「こ、この試合だけじゃねーし。長いシーズンを通して最終的に優勝すれば、それでいいのだから……」

「へえ、じゃあ。今日はたまたま負けてるけど、普段は強いってこと？」

「いや、目下七連敗中で……最下位を独走中」

「アハハハ！　それって、ダメダメじゃん」

　ケタケタと笑った真が、俺の繊細な神経を逆撫でした。

「うるせえよ！　お前は、さっさと風呂でも入れ！」

　そう怒鳴りつけ真を風呂に追いやった後、ようやくゆっくりと試合を観戦するのであったが……。

「…………」

　結果……１７対１にて、贔屓（ひいき）チームは大敗……。