ほんとのうた(仮題)
第1章 孤独(ひとり)と逃避(ひとり)
四十で独身……さらに無職となり……彼女にもフラれ……完全に孤独……か。
「……」
ピュウっと吹き抜ける夜風が、さっきまでよりも冷たく感じられる。せめて早く家に帰って寝てしまおう。
そんな風に思い、近道をしようと足を踏み入れた小さな公園で――。
「うわっ――!」
足元の砂利をズザッと踏み鳴らし、思わず背筋を凍らせた。俺をその様に驚かせた原因は、公園のベンチの上にひっそりと佇んでいる。
一瞬、裸なのかと思った。でも、違う。おそらくは、ショートパンツとタンクトップといった装い。いずれにせよ、この夜には薄着すぎるだろう。
ベンチ付近を照らし上げる、スポットライトの如き外灯。それが浮かび上がらせる姿は、長い両脚を抱え込むと、俯かせた頭からは長い髪を夜風になびかせていた。
お、女……?
俺はそれをじっと眺めて、そのような最低限の判断のみを下す。
抱えた両膝に押し当てられているから、その顔は見えない。だがおそらく、若い女だろう。スラリとした手足の白い肌と対照的な艶やかな黒髪、それらが俺にそう思わせている。
思わず声を上げてしまったが、彼女の方は俺の存在に気がついている様子はなかった。
眠っているのだろうか。だとしたら、酒に呑まれている可能性もある。というか、若い女がこんな場所に一人で居る理由なんて、それくらいしか思い浮かばなかった。
この公園の近所には、居酒屋やスナックの入ったテナントもある。コンパする大学生たちの姿を、度々見かけることがあった。
浮かれて飲み明かした挙句に、家に帰り着く前に眠ってしまった――そんな処かも、しれないな。
「……」
俺は足を止め、改めて暫し観察。
身に着けている衣服は、どこか薄汚れているようにも見えた。最近の若者のファッションについては、知る由もない俺ではあるが――それにしても。