ほんとのうた(仮題)
第3章 異常なる日常で
今はさ迷ってはいても、真はいずれ夢の彼方の住人へと帰す。四十年の己の人生において幾多の挫折を余儀なくされた俺は、彼女の放つ眩い光にこの身を焦がされることを――
――結局は、恐れていた。
ヤバい……完全に酔ってるだろ。
酒に酔い、自分に酔う。些かこの状況を大袈裟に考えているのだと気づき、俺はそんな自分を戒めた。
「俺も、寝るか……」
そうしてしまうことは、床にこの身を倒すだけの簡単な作業だ。
しかし、俺はふとパソコンに視線を止めると、何気なくそれを開いた。
「……」
とりあえず、ネットに接続。そして、おぼつかない指先で、検索ワードを打ち込む。
【天野ふらの】
次いで【失踪】【曲』【画像】等々の第二検索ワードより、【曲】を選びそれをクリックした。それに伴い画面に表示されたサイトの表題を眺め、俺は呆然とその一つを読み上げた。
「天野ふらの……若い女性たちの恋心をポップに奏でる……その素顔の魅力」
デビューから三年余り。自身の楽曲のほとんどの作詞を手掛ける。最近ではアルバム数曲の作曲にも携わり、更にそのアーティスト性を揺ぎないものにしつつあった。同年代の女性の多くの共感を呼ぶと、恋愛のカリスマとしての境地を切り開いてゆく――。
そんな情報をざっと眺め、俺は動画に上がってたライブ映像の一部を再生した。
「……」
天野ふらの――その唄を耳にするのは、それが初めてである。俺の様な中年の目から見ても、その姿も楽曲も確かに魅力的なものと認めることに些かも吝かではなかった。
だが――