テキストサイズ

ほんとのうた(仮題)

第4章 重ね合うもの


「はぁ……ん」

 またしても、その様な声を発する真は、身体を捩らせると同時にその左脚部を、俺の両太腿の間に割り込ませんばかりに可動させた。

「ちょっ……!」

 それを避けようとして、身体を反転させ俺は仰向けの体勢を取るが――。

「あぁん……」

 まるで追いすがるように、真は更にピタリと身体を密着させるてきている。

 左わき腹の周辺には、ぷにゅ、とゴム鞠の如き弾力が伝わり。纏わりつくような左脚は、俺の身体の上で“くの字”に折り曲がると、その膝頭が何とも微妙に蠢き始めていた。

 コイツ……なんて寝相してやがるんだ。

 と、そう思うも一瞬のこと。俺はすぐに、はたと気づくのである。

 だが、それも当然のこと。俺は確かにベッドに背を向けて寝ていた。そう、仮にベッドから転がり落ちるほどの寝相だとしても、現在の二人の体勢はあり得ないものなのである。

 まだ寝続けるタヌキを、俺はジロリと睨みつけ――言った。

「オイ――いい加減にしろ」

 その声を耳にして、パチリと開くその瞳で俺を見つめ――

「エへへ、バレたか」

 そう言って舌を出した真は、実に悪戯っぽく笑うのであった。

「まったく、朝っぱらからふざけやがっ――て!?」

 呆れてそう言いながら、身体を起こそうとした時だ。くいっと右腕を引っ張られるような感覚を受ける。それを不思議に思い、動かない右手を見て――俺は驚く。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ