ほんとのうた(仮題)
第4章 重ね合うもの
「な、なんだよコレは?」
テーブルの脚にタオルで括られた右手首。次いで全く同様の方法で、右の足首の自由をも奪われていることに気がついたのだ。
「ウフフ」
困った俺の顔を覗き、真が愉しげに笑う。
そうした子供じみた悪戯を前にして、俺は怒る気にもなれなかった。やはり呆れ果てて、とりあえずその意図を訊ねる。
「一体、なんのつもりだ?」
すると真は、俺の耳元に口を近づけ、それを擽るよかのようにボソッと囁くのだ。
「さあ? オジサンは、どうしてほしいの?」
「あのな……」
俺はジロリとした眼差しで、すぐ近くの真の顔を睨みつけた。
確かに右の手足は縛られ、枕にされた左腕にもまだ痺れは残っている。
真はそれで、俺の自由を奪ったつもりらしいが、仮にも大の男がそれだけのことで身動きを封じられるわけもなかった。
縛られているとは言ってみても、タオルとちゃぶ台の脚の拘束はあまりに脆弱である。ほんの僅か力を込めれば、造作もなく解くことができよう。
それに、その気になれば左脚だけでも、とりあえず真の身体を遠ざけることは可能なのだ。
しかし、真の方はまるでお構いなしといった感じで、俺の身体を長い手足で俄かに弄ってきていた。