ほんとのうた(仮題)
第4章 重ね合うもの
あーあ、畜生……。
思わぬ労力を浪費した俺は、朝だというのに晴れやかな気分とはなれない。
昨夜の頭の中で密かに築いた自分なりの一線は、一晩寝た翌朝には早くも有耶無耶になるところであった。なんとか邪な気持ちは振り払っていたが、こんなことが続けばこの先もそれを堅持し続ける保証も自信もない。
ともかく、真との間に男女の関係を持たないとした決意は、辛うじてキープ。ギリギリだよ、ホントに……。
それにしても、コイツ……。と、俺は何気なく真の方を見やる。
「……」
当の真はと言えば、今朝も食欲旺盛に朝飯を平らげると、今はテレビを眺めすっかりと寛いでいた。
そのように、ごく自然な振る舞いを前にして。
本当に、なんなんだ……? 俺はまた、決して軽くない頭痛に苛まれていた。そんな俺が、わかり易く仏頂面をしていたからだろう。
真はふとテレビの画面より視線を移すと、軽く小首を傾げつつ訊ねてきた。
「オジサン、気分でも悪いの?」
「まあな……少なくとも良好とはいえない」
君のお蔭で、といった若干の皮肉を漂わせたつもりであったが、真はその意図を一切汲もうとはしない。
「朝からそんな不景気な顔してると、運にだって見放されちゃうかもよ。だから私、スッキリさせてあげようかなって、そう思ったのに」
「そんなこと、頼んでねーから……」
そう言いながら、俺の頭の痛みが増した。