ほんとのうた(仮題)
第4章 重ね合うもの
「ハハ……」
「ああっ、馬鹿だと思ったんでしょ! なに、わけのわからないこと言ってんだ、コイツはって!」
思わず零した笑みに、真が激しく反応していた。しかし――
「いやいや、別に真のことを笑ったつもりはないよ」
「そう……?」
ああ、そうだ。俺が不意に笑っていたのは、強いて言えば矮小な自分自身のことだろう。
ちょっとした、たとえ話からも、真との感覚の違いは明らかだった。
それでも、俺は今こうして真に出会っている。それが、幸か不幸か、それはまだわからなくとも……。
だったら、俺は――これから、どうしたい?
そう自問したことに、まだ答えなどなく。だが、いずれ訪れる結末の形は、俺の想いによって変化するものではないように思えた。
そんなことは、初めからわかっている。それでも、なんらかのきっかけを真の今後の人生に対して、俺がもたらすことができるのならばと、そんな風に漠然と考えている。
果たして、その一歩となり得るのか。そこまで深く考えたわけでもなかった、が。
「さあ、着いたぞ」
とりあえず俺は、この日の目的の地に車を停めた。