ほんとのうた(仮題)
第4章 重ね合うもの
※ ※
バタバタしてたもんで、すっかり忘れちまってたよ。
ごめんな……。
まあ、変わらずとは言い難いけど、なんとか無事に生きてはいるからさ――。
「…………」
俺は訪れた墓前で、じっと目を瞑り手を合わせると、心の中で語りかけた。火を灯した線香の香りが、ゆっくりとした時間を紡いでゆくようだった。
小高い山間の道から徒歩で少し登った所。小鳥の囀りと虫の鳴き声が、緑に生い茂った木々と共に頻りに夏の訪れを告げている。墓はそんな場所に在った。
暫しの時が過ぎるのを、真は傍らで静かに待つ。どこに連れて来られたのかもわからないのに、それでも墓を参る俺のことを黙って見守ってくれていたようだった。
そうして、俺が所作を解き目を開いたタイミングを待ち、それから遠慮気味にそっと訊ねてきている。
「誰の――お墓?」
「俺の祖母のだ」
「オジサンの、おばあちゃん?」
「ああ――昨日が、命日でな」
そう答えると、真は珍しく申し訳なさそうな顔をした。
「あっ、もしかして……私のせいで、お墓参り来れなかったの?」
「そうじゃない。俺が失念していただけ。もう、十五年にもなるからな」
「そっか」
真はややホッとした様子で、軽く笑むと俺の顔を見て言う。