ほんとのうた(仮題)
第4章 重ね合うもの
合わせた手を解くと、真は感心したように言う。
「それにしても、立派なお墓だね。静かで良い場所だし。もしかして、ここって、オジサンの家の持ち山だったり?」
「そうらしい、な……」
「ええっ、スゴイじゃん! 実家の方は、お金持ちなのね」
「……」
「実家の方は」の「方は」の部分が、やけに引っかかるなあ……。だが、今の俺がその点に、文句を言える道理はなかった。
「まあ、この山の価値はともかく。俺の生まれた実家が、それなりの資産を有していることは確かだ。親父は一応、従業員五百は下らない企業を率いる立場。今は実務を長男に譲って、会長という肩書らしいけどな……」
「へえ、意外。だけど……ねえ、オジサン。だったら仕事のこと、お父さんにお願いすればよくない?」
真にそう問われた俺は、自然と口元に苦笑を浮かべている。
「俺はどうも昔から、両親と折り合いが悪くてな。特に親父との仲は険悪だった。自分の息子を思い通りにしようとする親と、それに逆らう息子。まあ、俺なんかの時代では、割とありがちな構図だよ」
「じゃあ?」
「まだ学生だった俺が、就職の時期を迎えていた頃のことだが。親父と派手に口論した俺は『縁を切る』という旨の捨て台詞を残して、それ以来――家には帰っていない」
俺はため息交じりに、そう話した。