ほんとのうた(仮題)
第5章 騒々しい景色の中で
だが――
「後じゃダメなの。今、すぐに代えて!」
「なぜだ?」
俺は足を止めると、当然の疑問を簡潔に口にする。
「だってさぁ……その……拭く時に、困るじゃない?」
「はぁ……そんなもん。とりあえず適当に拭いとけば、いいだろ」
「ええっ、やだよぉ!」
「やだとか言われても……」
一体、真のヤツは俺にどうしろというのか?
共に暮らし始めて、既に五日目。その天真爛漫な性質が俺を振り回しゆくのは、相変わらずの光景になりつつあった。
その時、カチッと音がして――どうやら真が、鍵を開いたらしいが。
「ハイ、どうぞー。入ってきてもいいよー」
「バ、バカ! いいわけあるかっ!」
「私がいいって言ってるんだから、気にしないで。それよりも、早くしてくれない。ちょっと胸が息苦しいかも……もしかして私って、暗所恐怖症?」
しらねーよ……。と思いつつ、俺は頭を抱える。
さてはコイツ、またしても俺を困らせ面白がるつもりか。そういうつもりなら、わかったよ。
構うものか、本当に入ってやればいい。そんなことできないと高を括っているから、真はさぞ驚くことだろう。
ククク、俺だってからかわれてばかりじゃねーからな。