ほんとのうた(仮題)
第5章 騒々しい景色の中で
俺は、ゴクリと思わず喉を鳴らしている。
えっと……なにを「早く」するんだっけ?
そんな間抜けな自問する俺には、最早、冷静な判断は失われていた。手にしたスペアの電球の感触で、なんとか目的は思い出していたものの。
「ん……ん? 確か……この辺りだと……?」
少し背伸びをして両手を伸ばすと、俺は照明の位置を手探りで探った。
後で考えれば当然ながら、再びドアを開き部屋から明るさを取り込んでから作業すべきであろう。というかそもそも、真の無茶な願いに真剣に対処していること自体が到底真面ではなかった。
ともかく、そうして――。
「おっ! ――よし、あったぞ」
なんとか天井の照明を探り当てていた俺は、ようやく電球を交換しようとするのだが――切れた電球を手で回してソケットより外そうとした、そのタイミングであった。
「ん? コッチにも、ナニかがあるよ」
俺は下半身に妙な感触を覚え、期せずして背筋をゾッとさせる。
「オイ……変なところを触んな」
「あ、ゴメンゴメン。退屈だったものだから、つい」
つい、じゃねーよ!
とは思いつつ、背を伸ばし直立(飽くまで身体がね)する俺と、その前に屈むような真との位置関係は、弥が上に男女間の奉仕的な行為を連想させかねないもの……。
やっぱり、遊ばれてる……なんて今更、気づくことでもなかろうに……。