ほんとのうた(仮題)
第5章 騒々しい景色の中で
「いいか、ふざけるな。俺は今、手がふさがってて危ないんだから」
緩んだ電球を落とすことを恐れ、俺は上げた手を下げることができない。その上、哀れなる四十男にとって、この姿勢を続けることは存外、辛いことだった。
「うん。私のことは気にしないで頑張って!」
「畜生……四十肩を、甘くみるなよ」
強張る肩口を振るわせつつ、意味不明な言葉を口走っている。
しかし、真はそんな俺に構うことなく、更に持ち前の悪戯心を加速させた。
その後の展開は(あまりにも馬鹿らしく)描写するに堪えないので、この密室に聴こえた二人の会話(&一部の擬音)を以って、各自想像していただくようお願いしよう。
「な、なにをっ……ズボンを下ろそうとするなっ!」
「だって、ここはトイレだよ」
「俺は用を足しに、来てねーから!」
「あ、そうだっけ。じゃあ、と」
「あっ……!」
「フフ、キミ――なかなか、良い反応をするね」
「バ、バカ……そんなに強く、ギュッとするな」
「あ、ゴメンなさーい。じゃあ、愛でるように優しく――と」
「強弱の問題じゃなく……と、とにかく、その手つきを止めて……」
「もう、文句の多い人ね。わかった。ホラ、手は放したよ」
「まったく……んっ!」
――パクリ!
「い、今のコレ……ななな、なんの感触……?」
「んちゅ……だって、手は使うなって言うから」
「いっ――いい加減にしろっ!」