ほんとのうた(仮題)
第5章 騒々しい景色の中で
パッ――!
その時――回復した照明が、俺の眼前にあられもない光景を映し出していた。
用を足そうとする真は、当然ながら半裸であり――と。ちなみに言っておくが、その無防備な下半身については幸い(?)死角となり、俺が目には映されていないことは補足しておこうか。
「あはは……」
「真、お前なぁ……」
真新しい電球が照らす中で、流石に両者とも気まずい想いをしているのであった。
「まったく……じゃあ、後はごゆっくり」
「おや、出ていちゃうの?」
「当たり前だ。さっさと、〇ンコにでも集中しろ」
「ああっ、それってセクハラ?」
「ハイハイ。じゃあ、勝手に訴えてくれればいいから……」
――バタン!
ようやくトイレを脱した俺は、ドッと疲れを感じるのであった。
真がこの部屋に来てからというもの、入浴中に蜘蛛がいたと悲鳴を上げてみたり。朝い起きない真の毛布を剥ぎ取ると全裸で寝ていたり、等々。
この手のお色気ハプニング(?)は、列挙するに暇がなかった。
だがそれも「一宿一飯」などと口にしていた当初とは、若干ながら趣が異なるように思う。真のヤツはなんというか、一種のレクリエーション的な感覚で、単にこの中年を困らせてを面白がっているだけのようだ。
いや、それならそれで問題がないとは、決して言うまい――が、それでも。
少なくとも、抱くとか抱かないとか、その様な男女の色情に展開する気配は微弱である。
彼女との間に一線を設けた(つもりだよ?)俺にしてみたら、それは良い傾向と言えた。
仮にそうだとしても当然ながら、肝心の俺が揺らいでしまえば一気にその方向に傾くことは必定であろう。この微妙なバランスを保ってゆくのは、心身ともにかなり骨の折れることに違いはないのだ。
果たしてこんな生活が、真のためになるのか……?
今は真が笑っていれば、それでいいと思うことはできる。が、さてこの先は、と考えれば特に妙案が浮かぶわけでもなくて……。