触って、七瀬。ー青い冬ー
第8章 初夜の残像
するりと舌が抜けると、今度は冷たいものがあたる。
あの指だ…
くちゅ、と入り口を広げるように。
「あっあぁっ」
あの指が、触れている。
「急に締まった。指好き?」
細く長い指は、するすると穴の奥まで容赦なく滑りこむ。
「あっ、たか、なし」
いつも見ていた。好きだった。
僕はその手にずっと見惚れていた。
「たかなし…」
突然、指が止まった。
「七瀬」
高梨が指を入れたまま僕の耳に囁く。
「俺のことは伊織って呼んで」
「い、いおり…?」
高梨の自己紹介の挨拶を思い出した。
《下の名前で呼んでくれたら嬉しいです》
「…そう」
高梨が僕の頭を撫でた。
「なんで…」
指がまた動き出した。
「あぁっ、そこ…、いおり」
指の先が奥を擦った。
ぐちゅ、ぐちゅ、と何度も出入りする。
翔太さんに“開発”されてから、
前を触ると奥も一緒に疼くようになった。
「ここ好き?」
ぐり、ぐり、と指先がそのスポットを当てる。
「そう、そこ、いいっ…」
足に力が入って、つま先が伸びる。
「先生がここ、教えてくれた?」
僕は首を振った。
「違う人…」
翔太さん。でもなんて説明できるだろう。
指が止まった。
「先生以外にも居たのか」
高梨は指を抜いた。
奥はまだ疼いてるのに、お預けだ。
「そういうんじゃないけど…」
「恋人?」
僕は首を振った。
「じゃあ誰」
初対面でやったなんて言ったら、
高梨は失望するだろうか…
「男娼…っていうか…お店の人」
「どこの」
「…わかんない。先生に連れてかれて」
先生の車から景色を見ていたが、
僕にはどこがどこかわからなかった。
「そいつ、名前言わなかった?」
「翔太って言ってた」
本名なのか、仕事上の名前なのかわからないけど、名刺まで貰ったのだからそれで合ってるはずだ。
「本当に…翔太って言ったのか」
「名刺貰った」
「あいつ…」
高梨は知っているのだろうか。
「あっ、まっ…」
急に太いのが当たった。
入り口に無理やり入ってくる。
「太っ…すぎ」
お腹が苦しくて息が止まる。
「翔太は良かった?七瀬」
「あっ、待っ…て、苦し…」