触って、七瀬。ー青い冬ー
第8章 初夜の残像
…
「痛…」
穴が痛い。
激しくやりすぎた。二日連続で。
「…それで?何で俺んとこ来たの」
僕は翔太さんの車の後ろで横になっていた。車はずっと走っていた。
「だから、どこにも行けないから」
翔太さんはお金持ちだろうと思ったし…
そんなこと言えないけど。
「本当にどこも?遠い親戚とかも?」
「はい」
そもそも家は親戚づきあいを真面目に…というか、きちんとしてこなかった気がする。
近づいてくる人達は多かった。
でも、両親はむしろ孤立することを望んでいたのかもしれない。
「そうなんだ」
実はもう一人心当たりがあった。
でも、ありえない。
もう会わないという約束をして、
まだ許してもいない。
「友達は?」
友達…
そういえば…高梨ってまだ、友達?
《七瀬》
昨日の夜、僕を犯したあの声は、
高梨だった。
僕達はたしかに今まで友達だった。
でも、あんな行為の後も、僕達は友達?
でも、酔っていたからって高梨は友達を襲うような人なのか?
いや…、あんなに酔ってたんだから理性は失ってたんだ。
「…翔太さん」
もしかすると、僕は友達未満になってしまった?
越えてはいけない線を越えてしまったことで、僕達の関係は壊れた?
次に高梨に会う時、僕はどんな顔をすれば良い?
「友達って…なんですか」
高梨は僕以外の誰かもあの部屋へ連れ込んだんだろう。そして酔った勢いでやったりしたのかな。
「難しい事聞くね」
翔太さんは運転しながら答えた。
「色々、分かんなくて」
僕は寝転がったまま、窓から空を見上げた。まだ昼過ぎの、明るい空。
「大した友達なんていなかったから俺も分かんないけどさ。俺の中では、友達って空気みたいなもんだと思う」
空気…?
「変な意味じゃなくて、ないと困るんだけど普段はあることすら忘れて過ごしてて、
でもたまーーに有り難みに気付くっていうか。要するに、自然に馴染むものじゃないのかな」
翔太さんは独特な考え方をするな。
「自然に?」
「自然に」
高梨は僕と自然に馴染んでいたかな。
《おはよう》
《今日、放課後空いてる?》
《また明日》
《七瀬》
馴染んでたのかな…
分からないけど、高梨が居なかったら僕はずっと独りだった。