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触って、七瀬。ー青い冬ー

第10章 夜明けの水平線




「…姫のお帰りだ」


翔太は息をついて扉を開け、
涙目の少年を迎え入れた。



寒さに震える少年は、
頭のてっぺんに雪を乗せていた。


こんな子が、どうして俺を信じてくれるのか、好いてくれるのか分からないけど。


俺の元に帰ってきてくれるのがとても嬉しくて、震えている肩を温めてやりたくて、
腕を広げた。


少年は冷めた目に悲しみと苦しみを溢れさせていた。


いつも守ってくれていた誰かが、
いつも隣にいた誰かが離れていく。

その辛さはよく分かるつもりだった。

伊織もよく分かる筈だ。


でも、この子は俺のところに来た。





それが答えだ




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