触って、七瀬。ー青い冬ー
第10章 夜明けの水平線
大好き…
「嫉妬した?伊織」
…そうやって俺で遊ぶのが本当に得意だな
「だって、かわいい俺の弟だもん」
高梨翔太、憎き俺の兄。
いくら兄貴でも今回だけは許さない。
…許せない。
「あれ、伊織もしかして本気モード?」
七瀬のこと、本気じゃないなら遊んでやるなよ。
あんたすぐ捨てるだろ。
「嫌だな、俺をお前と一緒にしないでよ。
あの子、俺のこと本当に好きなんだって。
可愛いし、素直だし。
伊織が好きになるのわかるよ」
くっ、と堪え切れなかった怒りが漏れる。
好きじゃない!
「伊織は本当に好きな子には素直じゃないもんね、昔から。
まぁ、とにかくこっちはこっちで仲良くするから、心配しないで」
…っせぇ。
あんたのとこで七瀬、本当に大丈夫なのかよ。
まだ例の事、落ち着いてないみたいだし
「うん、最初はだいぶ落ち込んでたね。
ここ1週間は誤魔化しながら楽しんでて、
今は…また、センセのことで混乱しちゃってるかも」
翔太以外、頼れる人がいなかったなんて。
最後の頼みにされていたはずの俺は、弱ってる七瀬を自分の都合で連れ出し、挙げ句の果てに…してはいけないことをした。
七瀬の手首に食い込んだネクタイが脳裏をよぎってしまう。
真っ白で、雪のようなあの肌が。
七瀬は逃げようとして、強くそれを引っ張って、でも抜けなかった。
トラウマを思い出させてしまった。
七瀬は俺の友達だった。
でも、あの耳に触れたその日から、
また触れたくて、でもきっと
七瀬は抵抗する。
おかしいと俺もわかっていて、
逃げてしまうとわかっていて、
それが嫌で縛り付けた。
他の誰よりもその姿に興奮して、
理性も何もなく、
ただ、思い通りにしたかった。
堪らなく良かった。
俺の性癖は異常だと、思い知らされた。
涙目で嫌だと言うあの表情が
堪らなくて、
やめられなくて
…七瀬に謝っといて。
「何を?」
…とにかく、ごめんって
沈黙が一瞬、時間を止めたみたいだった。
「嫌だね」
何でだよ
「ばいばい」
おい、まっ…
ツー、ツー、
「もう、伊織には何も譲らない」
ピンポーン