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触って、七瀬。ー青い冬ー

第11章 薔薇の蜜




俺の中の欲が、また膨らみ始めた。


白い肌が

俺の手によって 桃色に染まり



冷めた目が

俺の声によって 潤んでいく


その夜の甘い味が忘れられない


君の、頑固な心の壁も

その夜だけは壊せたような気がして


その冷たい目が、俺を見ていた気がして





「七瀬、俺とお前はまだ友達だよな」



七瀬は眼鏡を直した。




「そうだよ」



こんな会話、おかしいだろ?



「じゃあ、俺を助けてくれないか」



その声が忘れられない。

俺の名前を呼ぶ声が


「ずっと苦しかった」



七瀬は分かるはずだ


「ずっと一人で、帰る家もなくて」



俺は可哀想だ


「寂しくて」




七瀬はそっと座ったままの俺に近づいて、俺を抱きしめた。



「高梨は一人じゃないよ」



抹茶と、ミルクの香りがした



「僕だって、ずっと一人だと思ってた」



「でも、そうじゃなかった」



「ちゃんと、僕を助けてくれて、
見てくれている人は居たんだ」



「愛してくれる人もいたんだ」




「愛せる人も居たんだ」




「だから、」




俺は七瀬を離した。


これ以上耐えられない



「高梨にもきっといるはず」



それは、君じゃないのか







君の言う、君が愛し、愛される人は


翔太なのか




…俺じゃないのか?





あれが欲しいと、指差したのは



俺が先だった




… 10年も






「冗談じゃない」




七瀬は何も知らなかった。


澄んだ目で俺を見ていた。

何も知らないで、無防備に抱きついたりして



俺の理性の全てを壊したのは

君だ



手首を掴んだ。



「慰めて」


七瀬は息を止めた。
驚いているのか、怯えているのか


「触って」


その手を頬に引き寄せた。

七瀬は俺を見ていた。

混乱した目で、俺の目を見ていた


「七瀬」


構わない。



君が誰を愛していようと


君が俺のものじゃなくても


これが、ただの自慰行為でも


構わない




この瞬間だけ、君が手に入るなら




抵抗のできない、弱い獲物を狩るように


その目をじっと見つめて

動けないように、目の奥を見透かすように


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