触って、七瀬。ー青い冬ー
第13章 愛の嫉妬
「…夕紀、本当にそんな格好で行くの?」
「…うん」
七瀬夕紀、17歳
もう、どんなお婆ちゃんにも
女の子なのに背が高いねぇ、
なんて…言わせない…
絶対にだ…
眼鏡はもうやめて、髪は男らしくアイロンとワックスでセットして、制服はきちんとネクタイを締めた。
これで、僕は完璧に男だ
そして、学校に行って、
あの噂も、高梨とのキスのことも
全部、悪ふざけだったことにして
僕はそんな噂をなかったことにする
そのために、僕は、至って普通の、
そこらへんの男子高校生と変わらないということを証明してやる。
僕はきっと、女の子だって好きになれる
そうしたら、僕はその子と世間一般の、
普通の恋愛をする。
もう、僕はいじめられない。
そうだ、それがいい。
「行ってきます!」
「い、いってらっしゃい」
さようなら、翔太さん。
大好きだけど、やっぱり、
僕は、このままいくと
翔太さんに《俺も》
を求めてしまいそうだから
それが辛くなる前に、
今から離れる準備をする
新しい恋を、普通の恋を探す。
見つけてみせる。
…
「ちょっ…誰あの人!ねぇねぇ!」
「え、やばくない?
またイケメン転入生?」
「うそぉータイプー写真とっとこぉ」
「顔ちっっさ!」
「モデル?にしては背低めかなぁ」
「芸能人だったらどうしよ、握手してもらわなきゃ」
「既に外で囲まれてるよ」
「やだぁーかっこいぃー好きぃー」
「誰かあの人の名前知らないの!?
学年は?住所は!?」
「あれ、七瀬夕紀だよ」
「…」
「えぇえぇええぇえ!」
いや、びっくりしすぎ。
七瀬は元々そういう顔だから。
昨日だって…
「なぁーにムスってんの高梨ぃ〜」
神出鬼没、三刀屋慎二。
いつのまにか俺の机にこびりついている。
「っせぇ」
女子が張り付いている窓を見ると不快になるので、俺は窓に背を向けて座った。
「お友達がどうかしたかなぁ〜あ?」
「…」
「ほら、笑顔笑顔!そんなんじゃ七瀬君、怖がっちゃうよぉ〜?」