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触って、七瀬。ー青い冬ー

第13章 愛の嫉妬



「口閉じねぇと歯ぁ折るぞ」


「え、怖い怖い、怖いから!」


「…はぁ…」


俺は机に突っ伏した。



「三刀屋ー…」


「なに?」


目の前に三刀屋のアホ面がある。

こんな風にアホになりたい。


その目を見つめながら、俺は例のイケメン転入生もどきの顔を思い出していた。


雪より白い肌、全てを諦めた冷たい目。

その目は、もう俺をこんな風に見つめ返してくれない。





「…好き」


君の全てが好きだと
言いたい



「え、高梨?」




「…愛してる」



駄目だ、こんな事を言おうとしてあの顔を思い出すと、どうしても泣き顔や涙目になっている姿を想像してしまう。


…縛りたい。



「はぁ…」



そんな事を考えながら
愛の告白をするバカがいるか。
三刀屋より馬鹿かもしれない。


この気持ちが通じたとしても、
俺はやっぱり、いつか
七瀬を壊してしまいそうだ。


「…」


三刀屋は黙ってしまった。


「…なんか言えや」

三刀屋が両頬に手を当てていった。


「普通に、惚れそうなんだけど」


高梨伊織、男さえ惚れさせる魔性の男…


「は、気色悪」


高梨は冷めた目で吐き捨てた。


「え、何!?
何なのお前!!!」


「うるせぇ三刀屋、アホ」


「ってめぇ…って、あ」


三刀屋が突然口を閉じた。


三刀屋の視線の先を見ようと顔を上げると、そこに現れたのは七瀬夕紀だった。



クラスはシンと静まった。

俺にとってはいつもと変わらない七瀬は、
他人には別人のように見えただろう。



「…お、はよ…」


七瀬は、クラス中の視線に気づいて、
きまり悪そうに呟いた。


そして、てくてくと歩いて俺の隣に座った。



「あ、あの、七瀬君、だよね」

「うん」

「あのっ、えっと、その」


七瀬と必死に何かを話そうとしているみたいだが、その顔に見つめられて何も言えなくなっている。


俺だけが知っている七瀬の姿が晒されてしまったみたいな気分だ。


その女子、今お前のこと狩ろうとしてるぞ

逃げろや


「…大丈夫?気分悪いみたいだけど」


七瀬が俯く女子の顔を覗き込む。


「あっ、あの…は…は」


そんなに見つめてやるな、死ぬぞ


「保健室、行く?」


「あ、は…はひ」


七瀬が立ち上がった。

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