触って、七瀬。ー青い冬ー
第13章 愛の嫉妬
「終わりにするって…どういう意味?」
翔太さんは、微笑んで、優しく僕の湿った髪を撫でた。
「僕は、ずっと一人で、寂しかったって、
言いましたよね」
翔太さんはうなづいた。
「でも、それは翔太さんに甘えていい理由にはならないから」
「そんなことないよ」
翔太さんは優しくそう言うけど、
僕は首を振った。
「一人に、慣れなきゃ」
いつも優しく慰めてくれた翔太さんは、
今日も僕を慰めようとする。
「俺とはもう、一緒にいたくない?」
翔太さんが、悲しそうな表情で聞いた。
「…はい」
そんな顔をさせてしまうのが、辛かった。
でも、情に流されてしまったら、
僕達はまた泥沼にはまってしまう。
「セックスも?」
「…はい」
翔太さんと過ごした朝、夜、
何度も気持ちよくなって、
愛が、あるような、そんな甘い関係が
僕を引き止めて、時には慰められた。
「…ひどいよ、夕紀」
翔太さんは、苦しそうな声で言った。
「ごめんなさい」
こんなところまで、ずるずると翔太さんを引きずってきてしまった。
「俺、やっと気づいたのに。
離れたくないって、今気づいたのに。
これ、愛っていうんだよね?
俺、一人じゃわかんないんだよ。
夕紀が教えてくれるって言ったよね。
依存って言うのかもしれないけど、
俺は夕紀がいないと生きていけないんだ。
俺には夕紀が必要なんだ。
誰にも渡したくないんだ」
翔太さんは、しがみつくように言った。
「そんな風に言ってくれて、嬉しいです。
でも、やっぱり、僕は…行かないと」
言えない、言えない。
「どうしても、俺とは居れないの?」
今まで、ずっと隠していたことを、
言えない。
「…」
まっすぐな目で僕を見ている翔太さんは、
愛を知らないはずだった。
僕に愛なんて、ないはずだった。
「夕紀…」
今更、僕にそんなことを言うなんて、
翔太さんの方がひどい。
「ずっと、翔太さんに嘘をついてるような気がしていて」
その横顔が、見せたもの。
「…言えなかったことがあって」
僕は、最低だ
「何を…?」
「僕、一人だけ、たった一人だけ、
友達がいました。
ウザくてしつこくて、ムカつく友達が。」