触って、七瀬。ー青い冬ー
第13章 愛の嫉妬
「友達…って言っていいのか、よくわからないんですけど。
でも、少なくとも周りからはそういう風に見えていたと思います。
でもそうなるまでに、僕はその人があまり好きじゃなかったんです。
だけど、彼は僕から離れなかったんです」
*
「Highly sensitive person?」
僕達が仲良くなり始めた頃のある時、高梨が口にした。
「または、HSPとも言うらしい」
高梨は、いつものようにボールをゴールに投げて練習をしていた。
「意味は、とても敏感な人…だよね」
もしかして、そういう話なのか、これは。
「そう。
敏感っていうのには色々あるけど」
「た、例えば?」
うーん、と高梨はボールを腕で抱えた。
「人が気にならないことを、何故か気にしてしまうとか…。例えば、花火の音とか、本をめくる音、何かを書いてる音」
思っていた話と違ってよかった。
「大きい音だけじゃないの?」
「それは人によるみたいだけど、
聴覚だけじゃなくて、人の言動から心情を敏感に読み取るとか。
人と会話していると、どう反応したらいいかとか、相手の反応を考えすぎたりして疲れたり」
「…あぁ」
身に覚えがある。
「だから、世間話も苦手だとか嫌いなHSPもいるらしい」
「…へぇ」
僕は、人と話すのが苦手だった。
嫌い、だった。
相手が高梨だとしても、天気がどうとか、朝食がどうとかいう世間話は一番嫌いだった。
何故そうなのか、僕は考えたこともなかった。ただ、苦痛だった。
「だから、人付き合いを避けたり、一人を好んだりする。でも、一人でいると楽だからといって、孤独に強いわけでもない」
何故か、僕にとって今まで当たり前だと思っていたことが、こうして高梨に指摘されると、もしかすると他の人は違うのかもしれないと思った。