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触って、七瀬。ー青い冬ー

第14章 神の告白







昔の歌人はよく、

空から降る雪を花びらに例えた…らしい。








「嫌だ、寒ーい」



真っ白な空の下の通学路、俺の腕にしがみついているのは、木村千佐都。



「重い」


「はぁあ?女の子にそういうこという?」


「重いものは重い」


「ひっど!って、きゃっ」


「っう…」


どす、と音がして、空がひっくり返った。

俺の上に、千佐都が跨っていた。


「あっ…、ごめん、大丈夫?伊織…」


千佐都が心配そうな表情で俺の顔を見下ろした。


「…いや、わざとだろ」


「ちょっと伊織!違う!

今のシーンは雪で滑って転んで、
両片想いの2人の恋物語が急展開!
っていうところでしょ!

《あ…千佐都…》って言って見つめあった2人は、道端でファーストキス!」


「ファーストじゃないし、お前のキスは脅迫の上に成り立ってるだけだから」


「ねぇ、ちょっと口閉じててくれない?」


「それはこっちの…っんん!」


「…はぁ、伊織がもっとロマンチストだったらなぁ。黙ってれば顔だけは良いのに」


「お前がな」



ここ最近、
何で千佐都がこれほどしつこく俺にまとわりついているのか、それはなんとなくわかる。



「ねぇ伊織ぃ」

「…」



「もうすぐクリスマス、でしょ?」



出たー、出ましたー。



「聖なる夜は、好きな人と一緒にいるものじゃない?」


「知らん」

キリスト教徒じゃないし。
教会のピアノには世話になったけど。


「そういうものなの!
だから、ディナーでも一緒に行かない?
その後は好きにしていいから、ね?」


「行かねぇし、万が一行くとしても食い終わったら即解散」


「じゃあ決まりね?日時は追って連絡するから」


「行かないって」


「へぇ、そう。じゃあいいのね?」


何か、俺はいつも脅迫されているような気がする。

香田とか立花とか、こいつとか


「何がだよ。ヤリチンの件なら別にバラしてもらって構わん」

七瀬との噂も、もう収まったし、
今後どんな噂が広まっても誰も信じないだろう。

ふっ、と千佐都が笑った。


「違う」

「じゃあなんだよ」



「七瀬夕紀の秘密、学校中にバラす」


「七瀬の秘密?」

嫌な予感がする。

「伊織も知らないこと」

…俺も知らないこと?

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