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触って、七瀬。ー青い冬ー

第14章 神の告白



「…高梨、今」


僕はまだ、あの天使の声を聞いているみたいだった。


「好きって言った?」

僕は頭がおかしくなった
寒さで手先も耳もかじかんでるし
息が白くて
でも高梨の心臓の音が耳に伝わってる


「っ…てねぇよ」


上を見上げると、高梨は耳を真っ赤にしていた。

「言ってないの?」


雪が目の前を真っ白にした
先も見えないのに

僕はどこまでも歩いていけるような
恐ろしい開放感と安心感を覚えた

高梨は今、どんな顔をしてるんだろう

また僕をからかってるのかな


「…バーカ」


高梨はそう言って僕の頬に手を添えた

その真っ赤になった顔が決して僕には見えないように
高梨の真っ白な手が僕の目を覆った


甘い香りがした

蜂蜜に似た香りは
体が覚えている

その香りを感じた時
僕の体はいつも制御を失って
その手の動くままに翻弄される


甘いものが大嫌いだと言ったその人は
今日もまた甘い香りで僕を誘う

僕は目を覆われたまま言った


「世界で一番大嫌いだよ」



「俺も」


このキスはこんなに甘いのに
どうして俺はまた求めてしまうのだろう

その唇を見る度、その白い肌を見る度

欲しくてよだれを垂らしながら
何度も喉を鳴らした
爪を噛んだ


素直じゃないのね、なんて言われなくたって分かってる


でも体はいつも正直だから
体が勝手に求めてしまった
どれだけ抑えても



僕の視界は解放された

高梨は僕の肩に頭をもたれて
顔を隠した


「馬鹿だな」

「ばかばか言い過ぎ」

「…俺が」

高梨の手が僕の背中を撫でた
もう片方の手は僕の腰を撫でた

その手に足が震えた


「うん、馬鹿」

「立花とか香田とか翔太とか
色々うぜぇしムカつくから
とりあえず俺んとこ帰るぞ」


「うん」

「…七瀬」

「うん」

「今夜、好き勝手してもいい?」

「うん」

「最高」


自然に笑顔が溢れるのは

君といるから



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