触って、七瀬。ー青い冬ー
第16章 薔薇戦争
…
まさか俺がこんなベッドに寝かせられるとは。
固いし薬品臭いし
シーツがゴワゴワ
「ランカスター…ヨーク…
テューダー…ヘンリ7世…」
そしてテストも近い…
コツコツ、という靴の音。
ガラ、という扉の音。
「ちょっ、ダメですって、薫さん!」
七瀬の声だ、はやくも面会に来てくれたらしい。
…薫って?
ズシャッ、というカーテンの開く音。
「お、どっかでおうた色男やなぁ」
目が合ったのは、七瀬ではなく
もっと胡散臭い男の顔
「待ってくださいってば、立花さん!」
七瀬は息を切らせながら、後ろからついてきた。
なんでお前はよりによってこんな奴と?
しかも立花さんってなんだ、さんって!
「高梨、あの…」
立花は手で七瀬を制した。
「自分、この間は派手にうちの弟らぁ片付けてくれたらしいやん?ま、他の奴らにあんたのこと紹介できたっちゅうことでうち的にはまぁ、」
青い耳を隠す髪、紫のサングラス、
白いジャケットの中にアロハシャツ。
立花薫。間違いない。
サングラスを下げ、茶色い目をのぞかせた。
「わるうない、って感じ?」
立花はそう言うと、七瀬の肩に手を回した。
「てめぇ…っ」
ズキ、と痛む首。
「おーおー、傷口開いてまうで?
しばらくはおとなしくしときいや。
その間、この子はうちで預からせてもらうっちゅうことで…。なぁ、なっちゃん?」
なっ…ちゃん?なんだその呼び方は
「あ…えー…っと」
七瀬は、回された腕に恐縮しながらも
愛想笑いをした。
「おい七瀬?」
「あの、ちょっと誤解が…」
「どういうことだこれは、なんでお前は…
こいつはお前を誘拐して監禁して拘束して強姦した張本人だ!わかってんのか!」
「ひどい言われようやなぁ」
「そ、そうだけど…そうじゃなくて」
「そうなんだよ!いいか、よく聞けよ。
お前は立花薫がお前の両親を知ってると思ってるだろうが、本当は…」
「おっと高梨君?一体何を言うつもりや?
まさか、あんたに全てを暴露する権利がある、とでも思っちゃったりしちゃってる?」
「全てって、一体…」
俺は何を知ってる?
「残念ながら答えはノー!
っちゅーことでうちらはこれから大人なデートにレッツゴーするところやから…邪魔せんといてな?」
「おい、待てって!」