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触って、七瀬。ー青い冬ー

第17章 My Man



「この馬鹿…」

木村千佐都がち、と舌打ちをした。
香田は派手にセットされた金髪、大きな金のピアス、金と黒のラメのついたシャツにヒョウ柄のラインが入ったワイドパンツという派手で柄の悪そうな格好だった。明らかに病院には似合わない。

「あの.すみません。高梨さんの
面会にいらっしゃった方ですか?」

あまりに場違いな様子の高身長な男に菅野朱莉が尋ねると、香田千尋はぶんぶんと大きく首を振った。

「面会なんかしてる場合じゃねえから来たんだ!」

じゃあ一体どんな用事で、と尋ねる前に部屋の外から怒鳴り声が聞こえてきた。

「コラーッ!そこのヤンキー!勝手に部屋に入るなって言っただろうがーっ!!」

げっ、と香田千尋は顔をしかめた。

「この声、もしや警備員さん?
あっ!あなた、面会者のネームプレート持ってないじゃないですか!」

なるほど、入り口で何も言わずに突っ切ってここまで走ってきたようだ。

「とにかくお前ら、七瀬が危ない!
早く助けに行くぞ!」

「危ないってどういうことだよ」

「説明は後だ、長くなる。今は…」

香田がそう言って、ナース服姿の菅野朱莉を見た。


「な、なんですか」

「あんたにも協力してもらおうか」






「待てーっ!ってあれ、菅野さん?」

走ってきた警備員の前に偶然現れたのは菅野朱莉。25歳、看護師。

「あ、どーも!いつもお疲れ様です!どうしたんですか?お急ぎで?」

「あ、いえね、ついさっき入り口のところを突っ走って強行突破した派手な服の野郎がいまして。

それがあまりにも無理矢理で危なかったし、
服装も怪しげだったもんですから不審者だと思いまして追いかけていたところで」

「ああ、その方ならついさっき上の階に上がっていかれましたよ。確か最上階だったかなあ」

「おお、そうでしたか!まさかとは思いますが、
危険人物かもしれませんのでね。情報提供ありがとうございます!」

「いえいえ」


警備員が勇ましく階段を駆け上がる音を聞きながら、菅野朱莉はため息をついた。

「あーあ、
こんなことしてクビになったらどうしよ…」

そこにまた現れたのは先輩の看護師だった。

「あっ!いたいた菅野ちゃん!
さっき高梨伊織さんが部屋にいなかったんだけど、何か聞いてる?
できるだけ安静にしてないといけないのに」

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