触って、七瀬。ー青い冬ー
第18章 白の孤城
「…ん」
七瀬を抱きしめながら
安心させるように
優しくキスを続けた
そして、また抱きしめた
俺が今まで犯してきた全ての罪も
七瀬といれば忘れられた
七瀬だけが俺の光だった
「…七瀬、ありがとう」
ガチャ、と固い金属の音が響いた
それは七瀬の手首を拘束した
「な…」
七瀬は驚いた顔で俺を見た。
「しばらくお別れだ」
俺は手錠をした七瀬を持ち上げ、自分が繋がれていた鎖な七瀬を繋いだ。
「な、何してんだよ!高梨!」
七瀬はもう、俺に縛られることはない
俺ももう、七瀬を縛ることはない
「立花に挨拶しに行かないとな。
俺がここで一番の男娼になってやるって」
「ふざけんな!高梨!」
仕方ない。
これしか、俺が七瀬を守る方法はない
だからもう、俺に大丈夫だなんて言わないでほしい
いくらでも俺を盾にして
いくらでも利用したらいい
それが俺の幸せだから
「七瀬、お前に婚約者がいたとは思わなかった。
でも多分、俺といるよりは幸せになれるはずだ。
知ってたか?男同士は結婚できないって」
「…知ってるよ…」
七瀬は目に涙を溜めて俺を見て…いや、
睨んでいたのか
「…じゃ、元気でな。お幸せに」
七瀬の泣く声を背中にして、俺は部屋を出た。
部屋のすぐ外に、立花とその後ろの通路を塞ぐ部下達が銃を構えて立っていた。
「おお、これはこれは…若旦那。
七瀬の坊ちゃんはどうした?」
「俺が代わりに働けば、七瀬は夜の仕事を一切しない。それが約束だったよな?」
立花は満足気に笑った。
「なるほど、わかった」
立花が片手をあげると、後ろの部下達は銃を下ろした。
「歓迎するよ。ようこそ、我が家へ」
…ああ、最悪な人生だった。