触って、七瀬。ー青い冬ー
第19章 夢色の雨
元々、小さい頃から引っ込み思案で
《夕紀君、ご挨拶して》
その母の言葉がなによりも嫌で、嫌いで
《失礼じゃない。隠れてないで》
失礼とか、そんなのわかってるけど
だってわからないんだ
どうすればいいのか
恥ずかしくて嫌気がしてつらくて
逃げ出したくて仮面をかぶってしまいたくて
ずっと誰とも話さないでいきていけたらいいのに
なんて思ったりして
そんなのは子供の頃のよくある話、
僕もいずれ人と普通に接することができるようになるだろう
そんな風に思っていた
《いつか治るわよ、自然に》
でも、いつかって、いつ?
そして僕は人前で動けなくなった
水を飲むのも、鞄に手を伸ばすのも
スマホを見るのも、音楽を聴くのも
なにもかも見られている気がして
笑われている、気がして
息をするのも苦しくなった
そこに居るだけで苦しかった
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