触って、七瀬。ー青い冬ー
第19章 夢色の雨
頭が真っ白になった
いつのまにあんな動画が?
あんなものをネットに上げる?
顔も名前も全部晒す?
全世界に発信…?
いやいや、いや、…いや、
「驚きましたか?しかしこれくらい説明しないとあなたにご理解頂けないかと思いまして。
私が子供のする悪ふざけと同じことをしているのではないということを」
わかった、目的は何であれ
桃屋は僕に有害な危険人物だ
こんなところにまで敵が潜んでいるなんて
先生が死んだことを思い出せば、
僕にいつまでもこんな場所で呑気に暮らしていくことなどできないことは分かっていたはずなのに
「犯罪ですよ。警察呼びます」
唇も喉も震えていたが
抵抗するならそう言わなければ
「なるほど、それならこの交渉は不成立ですね。
元からあなたは私に協力するつもりがない、ということが分かりました」
桃屋は残念そうに言った
だけど僕の上に覆いかぶさったまま動かない
「それではあなたが逃げ出して警察を呼ぶ前に、
私はこれを先にばらまいておかないと」
桃屋は僕の上にまたがってスマホを操作し始めた。
「まっ、待って、離せ!」
「待て、というのはお願いでしょうか?」
「だ、だとしたら何だ」
「それは交渉に参加する意思がおありだと受け取って差し支えありませんか?」
「交渉って…」
「あなたには選択肢が二つあります。
一つは、このまま私が今、動画と写真を本名を添えてインターネット上の各サイトにアップロードし、
その後あなたは、私があなたを解放したタイミングで警察に通報して私が逮捕されるようにする。
もう一つは、あなたが私に協力すると約束して、私は各情報のアップロードをしないということに同意する、これが交渉に参加するということです。
どちらにしますか?」
「どちらって、交渉に参加しないと言ったら写真も動画も全部晒すんですよね」
「そうですね、あなたが交渉に参加しない、または今後私との《約束》を破ったその瞬間に私はこれらの写真や動画をアップロードします。」