触って、七瀬。ー青い冬ー
第19章 夢色の雨
「あなたが交渉に参加しない以上、
あなたが警察やその他の組織に通報したとしても、それらの組織が私を逮捕するその前までに私は必ずこれらをアップロードします。
これは必ず実行が可能です。なぜならここに写真があって、これはいつでも私が操作できるからです。
そしてあなたは今身動きがとれない、つまり阻止が不可能です。
私がアップロード後に逮捕されようが、どうなろうが、これらの情報自体はインターネット上から完全には削除されることはありません。
世界中の誰か一人でもこの写真や動画を自分の端末に保存したら、それはもう私達の手で操作することができませんから。それらをまたどこかにアップロードされても、私達にはそれを全て追うことはできません。
さあ、どうなさいますか?」
「…何が目的なんですか」
「交渉に参加されるということですか?」
「…写真と動画は消してもらえないんですか」
「もちろん、全ての約束が果たされたら
その時点で私がもっているあなたに関する全ての情報は削除します」
…ああ、これって一体なんの罰ゲームなんだ
僕にはこの悪魔に従う以外の選択肢はない
そして従ったとして必ず無事でいられる保証もない
「私の目的はただ一つ。しかし、あなたの働き次第ではその目的を変更しても構いません」
「目的って何、です」
「ああ、そうでしたね。これは先に言っておくべきでした。婚約を破棄してください」
「…それは」
サキちゃんは言っていた
《もう疲れたの。何も変えなくていいから、
ただ私と婚約するだけでいいから。
もう結婚する誰かを探すのは嫌なの》
彼女は結婚相手を見つけられないんじゃない
結婚をしたくないのだ
それでも形式上、結婚を迫られている状況では
しなければいけない
だから僕が、要らないこの権利を彼女に渡そうとしていた
女性と結婚できるというこの権利を
彼女なら僕でなくてもきっともっと良い相手を
見つけられるはず…
それでも彼女はもう見つけようとすらしたくない
そんな彼女をまた先の見えない道に一人残すのか