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触って、七瀬。ー青い冬ー

第6章 寒空の吸殻


僕は高梨が戻ってきたことが、まだ信じられなかった。

これは夢だ。

「…七瀬」

僕はそう言って僕を見ている高梨が、
本当に好きだと思った。

かじかんだ手に血が滲んでいた。

馬鹿だな。高梨がここにいるはずがないのに…。僕は馬鹿だ。
こんな夢まで見て、会いたかったのか。

「俺がいなくなったから、死のうとしたのか」

高梨は声を震わせて言った。
怒っているみたいだった。

高梨は優しいから…
何て優しいんだろう。

「そうだよ」

僕はもう死んでいるのだろうか。


高梨は怒っていたはずなのに、
突然怯えるような表情をして僕を見た。


「高梨…?」

僕は怖くなった。
夢の中でも、高梨は消えていってしまうのかと。

でも違った。


「馬鹿」

高梨がそう言って僕を抱きしめた。
痛いくらい強い力だった。
僕はこれが夢じゃないと気がついた。

「…ごめん」

高梨が言った。

「一度落ち着いて考えたかった。
俺はまだ、お前と一緒に居られるのか」

「うん」

高梨はきっと混乱しただろう。
僕の過去を突然打ち明けてしまったのだから。

「でも、考えても分からなかった」

「…うん」

高梨はもう片方の手も僕の背中に回した。


「そもそも考えることじゃなかったんだ」


「俺はお前から何を聞いても離れないと言った」


「お前がどんな過去を持ってても、俺が知ってる七瀬は嘘じゃない」


「俺はこれからも、今までと同じようにお前といるから」


僕は…まだ生きていて、いいんだろうか。

高梨はここにいた。
たしかに僕の目の前にいて、触れていた。



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