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take a breather

第21章 Be with you

「どういうことだ?
なんで大野が…」

まぁ、そう思うのが普通だよな
たった一度、試合を観戦しただけで『勝たせてやりたい』だなんて…
正直、自分でも思い上がってるとは思うよ

でも…

「新人戦で負けた櫻井さんが悔しそうにしてたから…
負けた事も悔しいんだろうけど
自分が思ってるプレイが出来ない悔しさもあるのかな、って
俺がペアなら、櫻井さんが思い描いた戦略が実行できるようにフォローするのに…
櫻井さんにあんな表情させないのにって、思ったんです」

「あの大会を見ただけで、そう思ったのか?」

「はあ…すみません、生意気言って…
ニノみたいに、バド歴が長い訳でもない俺がこんな事言うのも何なんですが
やっぱり勿体無いと思ったんです…
勝てる試合なのに負けてしまってることが」

「勝てる試合だったよな、あの最後の試合は…
なのに負けた…ごめん、雅紀」

「だから翔ちゃんのせいじゃなくて、俺のせいだって!
あの時もそう言って謝ったじゃん!」

櫻井さんは静かに首を振った

「今日、改めて知ったよ…俺の力のなさを…
二宮には雅紀を動かす事が出来たのに、俺には出来なかった
友達の雅紀に、どこが悪いとか指摘出来なかった…
ちゃんと話し合えば変わったかも知れないのに…
さっき二宮が言ったのは、そういう事だよな?
それって優しさじゃない…弱さだ
友情にヒビが入るかもしれないと恐れて、何も言わなかった俺が悪い
雅紀はそんなことで、怒るようなヤツじゃないのに…」

櫻井さんは眉毛を下げ、情けない表情で微笑んだ

「翔ちゃん…」

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