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take a breather

第22章 Song for me

国分さんから『じゃあ、よろしく』の一言で、車の鍵を渡された

車がどこに置いてあるかもわからないんですけど…

質問しようとしたら、智に腕を掴まれた

「行こう」

「え…」

「送ってくれるんでしょ?」

「はぁ…でも車取ってこないと…」

「だから案内するよ、駐車場」

智が俺の腕を掴んだまま歩き出した
智の隣に並ぶと智の手が腕から離れた

「あの、出口に回すとかじゃないんですか?」

「ははっ…ないない
それって大物芸能人じゃん」

また智に笑われてしまった

「でも大野さんは大物なんじゃ…」

あんなに多くのファンがいるんだから…

「俺ぇ?全然大物じゃないよ〜、まだ駆け出し
それにあんま好きじゃないんだよね、人に気を遣わせるの」

それにしては、国分さんに心配ばかり掛けてるみたいだけど…

「あっ、今『だったら居なくなるなよ』とか思っただろ?」

「あ…いえ、そこまでは…」

「『そこまでは』って事は、多少は思ったって事だよね?」

「まぁ…そうですね」

「翔くんってば正直」

「あっ!すみません」

「ううん、全然いいよ
あれはね、本当に悪い事してるなぁ…とは思うんだけど
俺、人と接するのあまり得意じゃなくて…
でも控室にいると、やたらと人が来るの
世間話とかされるんだけど
どう返して良いかわからないんだよね
だから、つい逃げちゃって…
んで、する事ないから眠くなってどこでも寝ちゃう
その繰り返し…ダメな奴でしょ」

苦笑いを浮かべてる所を見ると、本当に悪いとは思っているんだろう

「大丈夫ですよ、明日からはどこで寝てても俺が起こすんで」

「うん、頼りにしてる」

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